夕日を浴びるD52_235号機

「鉄の伝説 D52」

君は戦争末期、そして敗戦の焦土の中に生まれた。
戦争に追い詰められた人々へ物資を届けるため、
機銃弾の降り注ぐ中を傷だらけになりながら走り続けた。
敗戦の日も休まなかった。
君の原型は悲しい焦土の中の戦時仕様。
ナンバープレートは磨いてない鉄板にペンキの手書き、
極端な鉄不足、デザインなど無視し、熟練工も足りない中、
最小限の資材で最大のパワーを追求した鉄の勇者D52
自ら沸かした蒸気を鉄のメカニズムだけで全ての作動エネルギーへ変えるアナログの極致。それは鉄の芸術。
今残されたたった7両の仲間たち、朽ち果てつつもその発する磁力に私たちは集まった。

君に触れ思う、聞かせてくれ、熱い鉄の鼓動を、重い鉄の伝説を。

私たちは忘れない、灰の街から今の豊かな時代まで、日本を、私たちを支えて走り続け、そして静かに消えていった君たちを。
花の中のD52_235号機